出産後の肛門のゆるみ
出産後、大便をしたいとき切迫感が強い、下痢をすると便がもれるなど、肛門のゆるみを自覚する女性は少なくありません。出産後に自覚される便意の切迫感や便もれなどには、肛門のゆるみだけでなく、体質や大腸の働き(便の硬さ、排便の回数、大便を送り出す大腸の蠕動運動の強さ)が関係しています。
骨盤底筋は、骨盤骨格の側方に固定された左右の肛門挙筋が中ほどで肛門と会陰を介して合体した構造をしています。胎児が娩出されるときには、この肛門挙筋と肛門・会陰の複合体が強く引き伸ばされ、一部が損傷されることがあります。
①尿道 ②肛門挙筋 ③会陰 ④肛門
骨盤底の3D超音波画像。40代女性の傷ついていない骨盤底筋を含む断層像を描出したもの。
肛門のゆるみが起こる原因として、以下のようなものが知られています。
- (1)肛門括約筋の損傷
- (2)肛門括約筋と会陰を骨盤骨格に留めつけている肛門挙筋の損傷。肛門の近くで起こるタイプと骨盤骨格に固定されている箇所の近くで起こるタイプがあります
- (3)肛門括約筋や肛門挙筋を支配する神経の機能低下
35歳以上の年齢での初産、3500gを超える大きな胎児、子宮口が全開大してから娩出までの経過が5時間以上、鉗子・吸引による娩出などの場合に、肛門のゆるみが残るリスクは増大します。
低下した神経機能は、時間がたつとある程度回復します。腟周辺のしびれ感がとれたり、感じなかった便意を感じるようになったりするのは神経機能の回復を示しています。傷ついた筋肉の損傷箇所は、残念ながら回復しませんが、残された筋肉がその代わりに強く収縮するようになり、ある程度補われます。
監修:社会福祉法人三井記念病院 産婦人科 中田真木先生
- ※尿もれを引き起こす原因の特定は本人には難しい場合がありますので、担当医にご相談ください。
今すぐできる尿もれ対策には
このカテゴリーの記事
- 妊娠、荷物を持つともれる
- 妊娠中の尿もれ対処法
- 産後の尿もれ・子宮下垂
- 出産後、排尿に不具合
- 悪阻やくしゃみでもれる
- 妊娠・産後、せき・くしゃみでもれる
- 産後の尿もれ
- 産後の尿もれ受診の目安
- 産後の尿もれ、便もれ
- 産後、朝起きるともれる
- 産後、尿が出にくい
- 産後、尿が止められない
- 尿もれ予防の生活習慣
- 出産直後からの尿もれ
- 産後、肛門に力が入らない
- 産後の膀胱下垂
- 出産後のおねしょの悩み
- 産後、生理前の尿もれ・おねしょ
- 妊娠週数と尿トラブル
- 妊娠中の排尿の心得
- 分娩時の骨盤底ダメージ
- 分娩による骨盤や骨盤底の神経への影響
- 骨盤底にやさしい分娩
- 産後のおしっこトラブル
- 出産後の肛門のゆるみ
- 出産後のセルフケア
- 産後の骨盤底トレーニング
- せきやくしゃみでもれる
- 走るともれる
- くしゃみ・ランニングともれ
- 産後、スポーツでもれる
- 縄跳びで尿もれ
- トイレに間に合わない
- 残尿と出産、卵巣のう腫
- 出産後、子宮脱に
- 産後のお湯もれ、対処法