妊娠6カ月、尿もれが気になります。この先、もっともれるのかと心配に･･･。

突然、尿もれを経験してびっくりされたのでしょうが、妊娠後半はだれでも尿もれしやすいのです。その原因は、大きくなった子宮によって骨盤底がたわみ、膀胱が圧迫され、しかも出産に備えて腟や尿道周りの支持組織が柔らかく引き伸ばされやすくなることです。特におなかがますます大きくなる妊娠28週から出産がすむまでは、次第に尿もれしやすくなります。

妊娠中の尿もれは、多くの場合、出産がすめば治まります。程度や回数にもよりますが、高度なものでない限り、あまり心配しなくてもいいでしょう。もしものためにパッドをあてておく場合は、局所の衛生のために、ぜひ尿もれ専用のパッドを使ってください。

腹帯をすると尿もれしにくくなる人があります。腹帯が子宮のぐらつきを抑えて、不規則に膀胱が圧迫されることを防ぎます。もし腹帯をしていないならお試しください。

妊娠中に頻繁に尿もれしていたために、破水したときに尿もれと取り違える人がいます。破水はしばしばお産の兆候ですし、破水してお産が始まらない場合、それはそれでまた別の心配事があります。水が降りたときには尿もれと決めつけずに、一度は破水を疑ってみてください。破水したのなら、すぐに分娩施設へ移動しなければなりません。尿もれか破水か自信がない時には、かかりつけ産婦人科へ電話をかけましょう。

妊娠中の尿もれは、妊娠に固有の現象が引きがねになって起こっており、医学的には妊娠が終わればなくなります。ただし、堅固でうらやましい骨盤底の持ち主はやはり妊娠中にも尿もれしません。妊娠後半に頻繁に尿もれが起こる場合、骨盤底が「悲鳴を上げている」ということは言えます。

その場合、将来的なことも考えて、出産の後には十分な骨盤底の養生が必要です。出産から3週間ほどは臥床安静の時間をとり、重いものを持ち強い力を使う作業は避けてください。年齢などによって骨盤底の回復する早さには差がありますが、骨盤底の復古が進むまではコルセットや腰痛ベルトなどで胴回りを締めつけることもやめましょう。

出産後は、本人は感じていなくとも尿の排出には逆風が吹いています。分娩の影響で尿意や膀胱平滑筋の収縮力はしばらく落ちますし、膀胱を圧迫していた子宮が急に小さくなることも関係します。その他、帝王切開や無痛分娩で産んだ場合には、硬膜外麻酔の影響も加わります。この時期の心得は、尿意を感じてからトイレへ行き、穏やかにひと続きに排尿するよう努めることです。可及的に妊娠前の排尿を取り戻すようにしましょう。

してはいけないこと。腹筋の力を使って無理に尿を絞り出したり、まだあまり溜まっていないしトイレへ行きたい感じもしないのに頻回に排尿しようとしたりすることは、特にしてはいけません。そういう習慣がくせになると、後から尿もれしやすくなります。

産後の骨盤底筋トレーニングは、会陰の痛みが治まったら始めましょう。軽度の尿もれなら、1日2回、それぞれ10分程度行なうことで、骨盤底筋を元気にさせることができます。骨盤底筋トレーニングは、少なくとも出産から6カ月ほど続けたいものです。

監修：社会福祉法人三井記念病院 産婦人科 中田真木先生