現在、臨月で尿もれがひどくなっています。どんなことに気をつけたらよいですか?
現在、妊娠中で臨月です。
妊娠8カ月くらいから、歩く時にもれを感じるようになり、その時はよっぽど行きたい時だけだったのですが、臨月になってから1度散歩中に我慢できなく足を伝って以来、それからは、歩くともれるようになりました。
トイレに行きたいと感じた瞬間にもれ出し、力を入れると、逆にもっと出てしまいます。外を歩いていると10分ももたない感じです。体のだるさを感じる時に外出すると、もれ続けます。
先日は外出から帰って、夕食後に突然尿意を感じたと思った時は、トイレに間に合わず床にもらしてしまい、すごくショックでした。
1年前、性交渉後に膀胱炎になり、遊走腎と診断され、その治療中に妊娠してしまいました。初産婦です。出産は普通分娩の予定です。
出産により戻るかと思っていたら、もっとひどくなる可能性もあると知り、不安でしょうがありません。どのようなことを心がけるとよいのでしょうか? (花花・39歳)
尿もれ専用パッドの利用を。産後は骨盤底に負荷をかけないようにしましょう。
妊娠中は子宮が大きくなって膀胱が押され、さらに「骨盤の下で内臓を支える筋肉(骨盤底)」に負担がかかるため尿もれが起こりやすく、とくに妊娠後期(28週以降)で増えます。妊婦さんの約半数が何らかの尿もれを経験したという報告もあります。
尿もれしやすい場合は、外出時や重いものを持つときなど、尿もれ専用パッドを使用すると安心です。生理用ナプキンでは尿の吸収やにおい対策が十分でない場合があるため、尿もれの量に合った専用品を選びましょう。
妊娠前や妊娠中に発症する尿もれには、年齢(加齢で骨盤底や尿道の働きが弱くなる)や、膀胱・尿道の性能、尿道をしめる筋肉、神経の働きなども関与しており、個人差があります。妊娠前や妊娠中に尿もれした人は、出産後はいったん解消しても尿もれの素因は持ち続けるため、将来尿もれが起こりやすいと言えます。
ご相談の「尿意を感じた瞬間…、力を入れると逆に出る」が事実なら、排尿をこらえるつもりで反対にお腹に力が入ってしまい、腹圧で尿道が押し広げられて尿もれしている可能性があります。動作があやふやな人は自己流のトレーニングはしない方がよく、産婦人科などで超音波(エコー)を使って骨盤まわりの動きを確認し、対処法を相談してください。
膀胱や腟の炎症でも尿意切迫感や尿もれが起こることがあります。念のために、中間尿キャッチ(陰唇を開いて排尿し尿流の途中でカップに受ける)で尿の検査を受けるのがよいでしょう。
分娩で骨盤底や膀胱を傷めると、出産後はそれによって尿もれするようになります。分娩前から尿もれしている場合、吸引分娩・鉗子分娩はなるべく避けるのが賢明です。出産したら、産休中は横になる時間をとり、胴回りを締め付ける衣服を遠ざけて骨盤底を養生しましょう。出産後は「十分な尿意を待ってトイレへ行く」と、「お腹や股のあたりの力を抜き、ひと続きにおだやかに出す」を意識すると骨盤底に負担をかけない排尿を取り戻すことができます。
監修:社会福祉法人三井記念病院 産婦人科 中田真木先生
妊娠後期に尿もれが起こりやすくなる原因
妊娠後期の尿もれは、決して珍しいことではありません。これには、子宮や胎児などの重量が骨盤底にのしかかる「物理的な圧迫」と、出産に向けたホルモン分泌によって骨盤底の支持組織が柔らかくなる「ホルモンの影響」という、2つの大きな要因が重なり合っています。
子宮の増大と骨盤底への物理的負担
妊娠週数が進むにつれて子宮は増大し、膀胱が直接圧迫されます。そのため、膀胱の容量が物理的に減少し、以前なら平気だった少量の尿でも、強い尿意を感じやすくなります。
さらに、妊娠後期になると胎児の頭が骨盤内に深く固定されるようになり、膀胱への圧迫が増します。くしゃみ、咳、あるいは歩くだけといった、わずかな腹圧がかかるたびに尿がもれやすくなるのは、妊婦後の体の構造そのものが変化したことによる、ごく自然な反応といえます。
また、骨盤底の筋肉や靭帯は、増大し続ける子宮の重みを24時間絶え間なく支え続け、人によっては弛んだり下がったりします。そのため、臨月にかけて疲弊した骨盤底筋は、ふとした瞬間の強い圧力に対して踏ん張りがきかなくなり、尿もれの頻度や量が増えてしまう傾向があります。
出産前に知っておきたい「破水との見分け方」
臨月に入ると尿もれが起こりやすくなる一方で、もっとも注意しなければならないのが「破水」です。破水を尿もれだと思い込んで放置してしまうと、入院の遅れや母子へのリスクを招く恐れがあります。いざという時に落ち着いて判断できるよう、においや性状、自分の意思で止められるかといった見分け方のポイントと、破水を疑った際の正しい行動を確認しておきましょう。
尿と破水のにおいの違い
尿もれか破水かを確認する際は、まずパッドに付着したものの「におい」をチェックしてください。尿であれば、コップに採った尿と同じような匂いがするはずです。もし同じようなにおいがしない場合には、破水の可能性を考えるべきでしょう。
破水した羊水は、基本的には無臭、あるいはわずかに甘みを感じるような独特のにおいがあるのが特徴です。また、自分の意志でコントロールできるかどうかも判断の目安となります。尿もれはある程度意識的に止めることができますが、破水は一度始まると自分の意思では止められません。
破水を疑ったときに取るべき行動
破水の可能性があると感じたら、迷わずすぐにかかりつけの産科施設へ電話で連絡しましょう。電話口では産科施設のスタッフが、現在の状況を確認し破水の疑いがあるかどうかを判断するための質問を行います。
破水してから時間が経過すると、子宮内に細菌が侵入し、絨毛膜羊膜炎(じゅうもうまくようまくえん)を引き起こすリスクが高まります。これは母体・胎児の双方にとって危険な状態を招く恐れがあるため、迅速な対応が不可欠です。
破水の疑いがある場合には、たとえ夜中や早朝であってもすぐに来院を指示されるのが一般的です。病院への移動方法は、あらかじめ決めてある手段を利用して速やかに出向いてください。そのまま入院となるケースが多いため、準備しておいた入院用の荷物も忘れずに持参しましょう。
監修
社会福祉法人三井記念病院産婦人科
中田真木先生
1981年東京大学医学部卒。産婦人科専門医を目指して研修開始。
1991年から2年間、欧州に現存する最古の病院 Hôtel-Dieu de Parisで婦人科外科部門のレジデンシー、婦人科と骨盤底の手術を学ぶ。帰国後は都内の病院で働き、専門の診療の他、尿失禁手術と骨盤底再建手術の開発と普及に携わる。2002年より、三井記念病院産婦人科に勤務。現在は同施設の嘱託として仕事を継続。
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