4年前から膀胱のあたりの具合が悪い。子宮全摘出手術の影響でしょうか?
32歳と34歳でふつうの出産をしました。その後、尿がもれやすい感じはあり、生理用のパッドを使っていました。46歳のとき、子宮筋腫で手術を受けて子宮を全摘し、いったん尿もれはなくなりました。
4年ほど前から、おなかに力を入れたり出歩いたりすると妙にトイレへ行きたくなり、行きたい割にはトイレへ行っても尿はたいして出なくてすっきりしません。
そのうえ、2~3カ月したら腟の中から何かが風船のようにはみ出るようになり、パッドをあてる生活に戻ってしまいました。いつも膀胱のあたりが具合悪く、何をするのもおっくうです。
産婦人科で相談したら「子宮脱ではないから心配ない、このくらい大丈夫」と言われ、骨盤底トレーニングをすすめられましたが、うまくできなくて、すぐやめてしまいました。
最近、夕方から夜中にかけて全く排尿できないことが、ときどきあります。そのせいか、1カ月くらい前には夜中に大量のおもらしをしてしまいました。子宮を全摘すると私のようになるのでしょうか。手術を受けたら治せますか?(やけっぱち・63歳)
性器脱治療に力を入れる医療施設を探し、早く受診しましょう。
これはかなり具合が悪そうです。
子宮摘除後の性器脱では、腟が裏返った「腟外翻」の中にしばしば膀胱が落ち込んで尿路が強く曲がり、ふつうの性器脱よりも強い排出障害を起こします。排尿不能や夜尿症を起こしてくるのは、ほとんどがこの部類の性器脱です。
子宮摘除後の性器脱は珍しいものではありませんが、残念なことに産婦人科ではかつてあまり治療されていませんでした。今では泌尿器科医も性器脱の診療に加わるようになり、この部類の性器脱がたいへん具合悪いものだということも知られています。
性器脱を手術で治療している産婦人科や泌尿器科では、このタイプの性器脱を、(1)腟の天井を経腟的な手術で尾骨近くの靱帯にくくりつけてリフトアップする、(2)腟の天井を開腹手術や腹腔鏡手術で岬角(こうかく)と呼ばれる骨盤の高い位置に固定してリフトアップする、(3)膀胱と尿道のまわりの弱った組織を修復して腟前壁と後壁の押し合う力のつり合いをとる、等のポリシーで治療しています。
腟の天井部分を修復する処置は子宮摘除後の性器脱の治療にとって不可欠で、別名頂部修復とも呼ばれています。膀胱尿道が折れ曲がってうまく尿を排出できないまま放置すると、うまく出せないのみならず、膀胱炎や腎盂腎炎にかかりやすくなります。
また、無理におなかの力でいきんで排尿していると、膀胱から尿道へつながる部分が次第に変形して緩みやすくなり、将来手術を受けた後にも尿もれなど後遺症が残るおそれがあります。やけっぱちさん、性器脱の治療に力を入れている医療施設を探して早く受診しましょう!
産婦人科医・中田真木
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