70歳代女性の子宮脱、プラスチックのリングが合わないようです。
母(71歳)のことで相談します。
久しぶりに母と一緒に温泉へ出かけたら、お風呂で母の身体の下のほうから何か肉のようなものがはみ出しているのに気づきました。母は恥ずかしがっていましたが、私はびっくりして病院へ行くようにすすめ、母は帰宅してから近所の産婦人科を受診しました。
そこで「子宮脱」と言われ、「手術しても何年か経つと、また元に戻ってしまうから」と産婦人科の先生はプラスチックのリングを母の腟にはめました。
ところがそれから半年、トラブルの連続です。リングがはまっている間はしきりに尿がもれ、厚い尿もれパッドを1日何回も交換しています。また、尿だけでなく汚いおりものが出て、何だか臭いがするらしいのです。
トイレでうんちをする時、いきむとはずれてしまうこともあり、もともと便秘気味なのもあってか、月に2~3回ははずれて産婦人科へかかります。これじゃもう一緒に温泉へ行けないね、と母は嘆いています。
私もつらくて、少し遠くの総合病院の産婦人科へも連れ出してみましたが、ここでも手術はすすめないと言われました。泌尿器科に相談しても「子宮脱は産婦人科へ」と言われてしまいました。何とかならないでしょうか。(まりこ)
ペッサリーは諦めて手術の方向へ。70歳代では、連続装着による管理は一時的なものと考えましょう。
子宮脱を手術せずに管理できる「ペッサリー」は、俗称「リング」とも呼ばれ、昔から使われています。
手術せずに、というところがミソで、出産後の子宮脱などの場合、ペッサリーを装着すると脱出や外翻を起こした部分はすっきり還納されます。若い人の場合、ほどほどのサイズのものが落ち着くことが多く、朝はめて夜はずすような管理(自己着脱といいます)も容易です。
日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会の診療指針では、腟口から子宮や腟の覗いているくらいの子宮脱に対してまずペッサリーによる管理を試すよう指導されています。一般の産婦人科では70歳以降の女性が子宮脱で受診されたら、まずはペッサリーによる管理を試すようにしているところが多いようです。
しかし、高齢者の子宮脱・膀胱瘤は、すでに骨盤底の支える力が弱っているため、装着したペッサリーが安定するためには大きなサイズのものが必要となり、装着時に違和感や痛みが出ます。違和感のないサイズでは、はずれてきてしまいます。
大きなサイズのペッサリーをはめたままにすると、ペッサリーが腟壁にあたる箇所で粘膜が傷つき、出血、臭いおりもの、腟周囲の蜂窩織炎(腟の周りの組織にばい菌が侵入する)など、さらなる問題に発展していきます。管理を怠ると腟と直腸の間に瘻孔(腟の後壁がくずれて、腟腔と直腸腔がつながった状態)ができることさえあるのです。
また、ペッサリーを装着しても手術ほどは細やかに修正されないため、高齢者ではしばしば、ペッサリーを入れると脱出や外翻はおさまるが尿がもれる、ペッサリーをはずすと尿もれはおさまるが腟や子宮がまたはみ出してしまう、という板挟みになります。
まりこさんのお母上は71歳、まだ子宮脱・膀胱瘤の診療では高齢者の部類ではありませんが、ペッサリーによる管理はうまくいっていません。手術による治療を考えることになります。
昨今は、総合病院では70~100歳の患者がさまざまな手術を受けています。子宮脱・膀胱瘤を治療する手術の多くは、高齢の人も視野に入れており、しかも根治的な治療です。産婦人科・泌尿器科を何カ所か受診すれば、必ず手術治療の提案が出て来るはずです。リサーチしてみてください。
監修:社会福祉法人三井記念病院 産婦人科 中田真木先生
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