難治性過活動膀胱の治療
「過活動膀胱」(切迫性尿失禁)では抗コリン薬、β3(ベータースリー)作動薬というよく効く薬があり、この2つの併用も行われます。しかし、一部には、通常の薬物療法で改善しなかったり、薬の副作用で薬を継続できなかったりするケースがあります。
こういった「難治性過活動膀胱」に対して、ボトックス膀胱壁注射、仙骨神経刺激療法(SNM)という治療法がそれぞれ2020年、2017年から保険で行えるようになりました。
通常の薬物療法で我慢のできない強い尿意(尿意切迫感)、切迫性尿失禁、頻尿がコントロールできないという方は、専門医に相談されるとよいと思います。
◎ボトッスク膀胱壁注射(ボツリヌス療法)
ボツリヌス毒素は副交感神経の終末に作用して、平滑筋や横紋筋をゆるめる効果があります。商品名としてはボトックスで、美容整形で「しわとり」に使うというと、あれかと思いあたる方もあるでしょう。医療では眼瞼痙攣、顔面痙攣、痙性斜頸など、多くの疾患に筋肉注射の形で使われています。
膀胱に局所麻酔薬を入れて痛みをとった後、内視鏡を使って膀胱の平滑筋に注射をします。比較的簡単な処置で、多く外来で行われます。有効期間は4~8カ月で、3カ月あければ再施行できます。
副作用として、膀胱炎と尿閉(尿が出せなくなること)が数%ずつあります。尿閉については、前立腺肥大症の合併が多い男性や、もともと残尿のある方で特に注意が必要です。
◎仙骨神経刺激療法(SNM)
仙骨神経刺激装置を埋め込んで、神経に電流を流し、難治性過活動膀胱を改善する治療法です。膀胱や脳に情報を伝える経路(求心路)に作用して、排尿反射をコントロールすると考えられています。
機器の植え込み、現時点の製品ではMRIが行えなくなることが敷居を高くしていますが、尿失禁・便失禁の両方を改善できるという利点があります。
監修:名古屋鉄道健康保険組合名鉄病院 女性泌尿器科付部長 加藤久美子先生
- ※尿もれを引き起こす原因の特定は本人には難しい場合がありますので、担当医にご相談ください。