トイレに行くのが我慢できません!そもそも尿意を感じるのはなぜですか?
尿意とはなんでしょうか?実は尿が溜まっていないのに尿意を感じる人もいます。膀胱や骨盤底を守るためにもその原因と対策について理解を深めましょう。
尿意を感じるのはなぜですか?
自然な尿意は膀胱に尿がたまり、膀胱が引き伸ばされて脳が「尿意」を感じることによって起こります。しばし尿意を我慢する必要がありますが、トイレに行って排尿の態勢が整い我慢することをやめると、尿道がゆるみ膀胱平滑筋が収縮して排尿が行われます。
しかし、実際には膀胱に尿がたまっていないのに「尿意」を感じている人もいます。尿道がゆるんでいないのに無理にいきんで尿を絞り出すことが習慣になっていると、尿道刺激症状や尿道違和感のようなものが現れ、これを「尿意」と誤って感じる人がいます。また、子宮脱や膀胱瘤など臓器が下がることで感じる違和感を「尿意」と取り違えている人もいます。頻尿やトイレを我慢できないなどの症状がある場合、本当に膀胱が過敏であったり膀胱の容量が足りなかったりすることもありますが、尿道刺激症状や子宮脱や膀胱瘤などの原因も少なくありません。
排尿習慣が悪くなる原因は?
年齢に関係なく、若い人でも過度の緊張によってトイレによく行くようになり、頻尿によって刺激症状が出て尿意や違和感を感じ、尿はたまっていないので、いきむような不自然な排尿を繰り返し、また刺激症状が出る...という悪循環ですね。本当に膀胱容量が小さくてよくトイレに行く人もいますが、夜に膀胱に尿がたまって、朝にはまとまった量の排尿をしているのならば、膀胱容量には問題ありません。昼間だけ刺激症状による頻尿があるならば、腟の炎症による影響もあり得ます。出産経験があるのに婦人科の診察で腟鏡を入れると痛みを感じる、などの場合がこれに相当します。
実は簡単!膀胱容量のチェック方法
排尿する際にコップに尿を受けて、排出された量を測るだけです。この1回の排尿量が膀胱の容量と同じになります。トイレで出した量で膀胱容量を計る場合、いろいろなタイミングで何度か計って最大量を求めます。一般に、夜間睡眠中から朝起きて1回目までの排尿で、1回排尿量が最大になります。
膀胱内にためることのできる尿量は、正常では200〜400mLとされ、500mLまでは問題がありません。最大容量が200mLより少ないのは異常のサインで頻尿にもなりますが、女性では齡を取るにつれて逆に最大容量が大きくなることがあり、これも問題です。膀胱内に本来の容量を越える尿がたまり、膀胱が過度に引き延ばされて膀胱の血液循環が悪くなり、神経や平滑筋が傷んで膀胱の機能が低下します。膀胱の過伸展と血の巡りの不足した状態が長く続くと、尿はますます出にくくなり尿意はますます鈍くなって、最終的に何百mLもの残尿を抱えるようになります。
膀胱を守る
加齢により次第に膀胱に溜まる尿の量が増大していく現象は、すべての女性に見られる訳ではなく、元もと潜在的に尿意が低下している人に起こる過程です。膀胱容量がつね日頃限度(目安は500mL)を超えていると、虚血(=血の巡りが悪い状態)により、膀胱の神経や平滑筋が徐々に傷つきます。
診療の際に、必要があって何回も排尿量を計ってもらうことがあります。排尿量を記録したチャートで、夜間から早朝にかけての1回排尿量が限度を大きく越えて例えば800mLあるとしたら、血の巡りが悪い状態は数時間続いています。すでに尿意は鈍くなっている訳ですが、時間がたつとさらに膀胱機能は低下し膀胱内尿量は増大するおそれがあります。このような場合には、膀胱を守るために、夜8時以降は水分摂取を控えめにする、夜間起き出してトイレに行くようアラームをセットする、など指導しています。
骨盤底筋や腹部の筋肉の力を抜いて膀胱と尿道の強調動作で自然に排尿していれば、骨盤底は痛まず、子宮脱や膀胱瘤にもなりにくいのです。しかし、膀胱に限度を越える尿をいつもためていて膀胱の神経や平滑筋が傷んでしまうと、排尿のとき膀胱の平滑筋はもはや収縮してくれません。それでも尿道をゆるめて尿を排出することは可能ですが、膀胱機能が低下するといきみを加えての排尿になりやすく、いきみを加えて排尿する習慣は、今度は腹圧性尿失禁を招く結果となるのです。
まとめ
あなたの尿意は正しい尿意でしょうか? 頻尿気味でトイレで力を入れておしっこしていませんか? もし気になるなら自分の尿量を測ってみるのもよいでしょう。正しい排尿習慣を身につけ、早めに膀胱や骨盤底を守るよう気をつけましょう。
中田真木先生(社会福祉法人三井記念病院 産婦人科)